その他

労働問題

解雇や退職について

労働契約(雇用契約)の終了事由にはどのようなものがありますか。

まず、使用者の意思によって終了する「解雇」と、労働者の意思又は労働者と使用者の合意によって終了する「退職」があります。
そして、「解雇」には、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇の3つの類型があります。

普通解雇とは、労働者の能力不足など就業規則に定められた解雇事由に基づいた解雇のことをいいます。
懲戒解雇とは、懲戒処分(制裁又は懲罰として行われる処分)としてなされる解雇のことをいいます。
これも、就業規則で定められた懲戒事由が存在しなければ、行うことができません。
整理解雇とは、会社(使用者)の業績不振等を理由に行われる解雇のことをいい、いわゆるリストラがこれに当たります。

使用者により行われた解雇が有効かどうかはどうやって判断すればよいですか。

解雇がいずれの類型に該当するかによって判断方法が異なります。
まず、普通解雇の場合は、①労働者に解雇事由に該当する行為があったか、②労働者の行為が重大なものといえるか、 ③使用者が解雇の前に注意や指導により労働者の態度や行為の是正に努めていたか、④解雇することが社会的に相当といえるか、をそれぞれ検討することになります。
①から④すべてが認められる場合でなければ、普通解雇は有効とならず、すでに行われた普通解雇は無効であるということになります。
普通解雇が①の存在だけで有効とされないのは、労働契約が労働者の生活を支える基盤であり、 解雇がやむを得ないといえる場合でなければ一方的に労働契約を終了させるべきではないとの考慮が強く働いているからです。

次に、懲戒解雇の場合は、①就業規則に定める懲戒事由に該当するか、 ②懲戒解雇が相当である(けん責や減給処分等では不相当なほど労働者の行為が重大である)といえるか、③二重の処分に該当しないか、 ④適正な手続がとられているか、をそれぞれ検討することになります。
①から④のすべてが認められる場合でなければ、懲戒解雇は有効とならず、すでに行われた普通解雇は無効であるということになります。

最後に、整理解雇の場合は、①会社に業績悪化等の人員削減の必要性があるか、②解雇を避けるための努力をしているか、 ③解雇者の選定が公正か、④説明及び協議を行ったか、をそれぞれ検討することになります。
①から④のすべてが認められる場合でなければ、懲戒解雇は有効とならず、すでに行われた普通解雇が無効であることは普通解雇や懲戒解雇と同様です。

会社から、退職しなければ懲戒解雇にすると言われて、やむを得ず、退職届を提出しました。このような場合でも、退職したことになってしまうのでしょうか。

懲戒解雇であれば上記①から④に該当することが必要になるため、退職という形を採らせたのだと考えられます。
このような場合、労働者としては、会社から脅されて無理やり退職届を提出させられたのですから、退職の意思は真意に基づかないものとして、取り消すことができます。

会社に対して解雇が無効だと主張しても、会社は聞く耳を持ってくれません。
このような場合、裁判を起こすしかないのでしょうか。
他に何か手続があれば教えてください。

解雇が無効だと考えられる場合、会社に対して裁判を起こして、その会社における労働者として地位を確認したり、 会社から支払われるはずであった給与の支払を請求したりすることはもちろん可能ですが、 その前に、簡易迅速な手続で紛争を解決すべく用意されている手続があります。

まず、都道府県労働局長による紛争解決手続として、同局長による助言指導制度と、紛争調整委員会によるあっせん制度があります。 いずれの制度も当事者の自主解決を手助けするものですから、助言・指導やあっせん案の内容には強制力がありません。
次に、労働審判という手続があります。これは、裁判所において、労働審判委員会が3回の期日で判断を下す手続で、 その判断には強制力があります。但し、その判断に不服がある場合には、通常の裁判に移行します。労働審判手続は短期間に主張や証拠を整理する必要があるため、労働者の方ご自身でこの手続を行うのは困難です。

残業代請求について

残業代は誰でも請求することができますか。

「管理監督者」にあたる場合には残業代を請求することができません。
  この「管理監督者」にあたるか否かは、役職が付されているかどうかを形式的に判断するだけでは足りず、以下の要素によって総合的に判断します。

  • ①  部下の有無
  • ②  職務内容に部下の労務管理が含まれるか否か
  • ③  出退勤の自由が認められているか否か
  • ④  役職に見合う役職手当が支払われているか否か
残業代が発生するのはどの部分の労働時間ですか。

残業代が発生するのは、時間外労働にあたる部分です。
そして、時間外労働とは、法定労働時間を超える部分の労働時間(労働時間には休憩時間を含みません。)をいいます。

この法定労働時間とは、1日8時間、1週間40時間の両方を指します。
したがって、実際の労働時間が1日8時間であっても、1週間のうち6日働いた場合には、 1週間の労働時間が48時間となってしまい、そのうち8時間は時間外労働となります。

また、1週間の労働時間が合計40時間以内に収まっていても、そのうち1日でも8時間を超えていれば、その8時間を超えた分は時間外労働となります。
この法定労働時間に対し、会社の就業規則で定めた労働時間を所定労働時間といいます。
実際の労働時間が所定労働時間を超えているが法定労働時間内であったときには、その部分は時間外労働とはならず、割増賃金は発生しません。
もっとも、その部分について通常の賃金は当然発生します。

残業代が発生している場合、その額はどのように計算すればよいですか。

残業代の計算は以下のとおりです。

  • (365日-1年間の休日)÷12月=1か月の所定労働日数
  • 1か月の所定労働日数×1日の所定労働時間=1か月の所定労働時間
  • 月給÷1か月の所定労働時間=1時間あたりの賃金
  • 1時間あたりの通常賃金×1.25=1時間あたりの残業代
  • 1時間あたりの残業代×残業時間=残業代合計

なお、1か月に60時間を超えた時間外労働の部分は1時間あたりの残業代が1時間あたりの賃金の1.5倍となります。

残業代が発生しているのに会社が支払ってくれないときはどうすればよいですか。

裁判上の手続を採る必要があります。
必要な証拠としては、時間外労働を行っていたことを証明する資料(タイムカードなど)と給与額が分かる資料(給与明細など)です。

セクハラやパワハラについて

セクハラとは何ですか。

セクハラとは、セクシュアルハラスメント(性的な嫌がらせ)の略で、男女雇用機会均等法によれば、 「職場において行われる性的な言動で女性労働者の対応によりその労働条件につき不利益を受けること、またはその性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」をいいます。
たとえば、交際を断られたことを理由に無視する、出張先等で性的な関係を求める、飲み会等で執拗にボディタッチをする、性的な経験を聞いたり性的な会話をする等の行為がセクハラにあたります。

パワハラとは何ですか。

パワハラとは、地位や権力等を利用した嫌がらせのことをいいます。

相手の行為がセクハラやパワハラにあたる場合、どのような請求が可能ですか。

セクハラやパワハラを行った相手に対する損害賠償請求が可能です。相手のセクハラ行為又はパワハラ行為が強制わいせつ罪、 傷害罪等の犯罪にあたると考えられる場合には、相手を告訴することによって刑事上の責任を追及することが可能な場合もあります。

また、会社に対して、被用者が職務の執行に際してセクハラ又はパワハラという不法行為を行ったとしてその使用者責任を追及することや、 セクハラ又はパワハラが行われるような環境を改善しなかったという雇用契約上の債務不履行責任を追及することも考えられます。

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